2018年10月7日(日)13:00〜16:30広島市西区民文化センターにて平成30年度高次脳機能障害研修会が開催されました。この研修会は、広島県高次脳機能センターが事務局となり、当法人も協力団体として企画に関わり、日本損害保険協会の助成をうけて家族や当事者のための講演会を毎年開催しています。
今年は、東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座 教授 渡邉修氏、横浜市リハビリテーションセンター機能訓練課 臨床心理士 山口加代子氏を講師にお迎えしました。
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渡邉氏は「前頭葉損傷に対するリハビリテーション」をテーマに、脳の模型を手にしながら損傷部位と症状をわかりやすく説明してくださいました。社会でうまくやっていく「社会脳」をきたえるためには、①相手を知り ②自分の苦手な部分に気づき ③感情をコントロールするために ④対人関係を良好に保つ技術を学ぶ機会が必要 と話され、病院のリハビリだけでなく「地域でのリハビリ」が欠かせないと強調されました。渡邉氏の勤務する東京慈恵会医科大学第三病院がある北多摩南部医療圏(武蔵野市、三鷹市、府中市、小金井市、狛江市)では、高次脳機能障害者支援マップをつくっているそうで、支援ができる機関が106カ所もあるそうです。
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山口加代子氏は、「高次脳機能障害が生じている方への支援」をテーマに講演されました。当事者が事故や病気の前と変わってしまった自分のことや周りの状況をどんなふうにとらえているかを、家族や支援者が理解するのに役立ちそうな書籍をいくつか紹介してくださいました。高次脳機能障害になることで当事者が失うものとして「認知機能」「収入」「社会的地位」「居場所」「人間関係}「目標」「自己有能感・自己肯定感」をあげ、二次損傷として不安や抑うつ、無気力、社会的引きこもりなどになることがあると話されました。また、大脳の右半球損傷の患者さんは、損傷部位の特徴から言葉以外のコミュニケーションが苦手になっている傾向があり、人への関心が薄く、表情が乏しかったり表情を読めないことが多いため、関わる介護者や支援者が患者に対する感情的問題を抱きやすいという検査結果の引用も興味深いものでした。支援にあたるひとりとして、当事者の喪失感や家族の気持ち、自身の感情についても意識することが大事だと思いました。