脳梗塞や脳出血、交通事故や転落事故などで脳が損傷を受け 脳の働きが低下することによって生じる症状を「高次脳機能障害」といいます。 年齢や性別に関係なく誰の身にも起こりうる障害です。
2年前脳梗塞で倒れたAさんは、13時からの会合に出かけなければならないのに、顔を洗ったり、着替えたり、荷物をカバンにいれるなどの準備を何からしていいのかわからずに間に合うように家を出ることが出来ません。
物事の優先順位が決められず、効率的に計画を立てて実行できないという
遂行機能障害が顕著な例
1年前交通事故に遭ったBさんは、落ち着きがなく30分程度の作業の間でさえ座っていることが出来ません。そしてひどく疲れるためすぐ横になってしまいます。それなのに、事故前のように車の運転をしたがります。
注意障害と易疲労性が顕著で、病識に欠ける例
3年前転倒して頭をけがしたCさんは、母親が「秋になったら長袖のシャツを買いに行きたいね」と話していたのを、翌日には「明日、母と服を買いに行くことになった」と友人に電話していました。
自分の都合のいいように理解し、正しく情報処理をするのが困難な例
短期間の病院のリハビリでは見えにくいこれらの症状は、退院後の生活の中で現れます。
当事者や家族がおや?と感じても「まあ、退院したばかりだし...」とか「今回はたまたま...」というように、「障害」とは認識されにくいです。麻痺や歩行障害といった目に見える障害に比べると高次脳機能障害は非常に分かりにくく、気づきにくい障害です。
国立障者リハビリテーションセンターでは次のように診断基準を定めています。 高次脳機能障害には診断基準あるように、脳の損傷において起こるものです。 決して心理的に起こるものではありません。
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 国立障害者リハビリテーションセンター
「高次脳機能障害」という用語は、学術用語としては、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。一方、平成13年度に開始された高次脳機能障害支援モデル事業において集積された脳損傷者のデータを慎重に分析した結果、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害を主たる要因として、日常生活及び社会生活への適応に困難を有する一群が存在し、これらについては診断、リハビリテーション、生活支援等の手法が確立しておらず早急な検討が必要なことが明らかとなった。そこでこれらの者への支援対策を推進する観点から、行政的に、この一群が示す認知障害を「高次脳機能障害」と呼び、この障害を有する者を「高次脳機能障害者」と呼ぶことが適当である。その診断基準を以下に定める。
MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。
なお、診断基準のⅠとⅢを満たす一方で、IIの検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかにできない症例については、慎重な評価により高次脳機能障害者として診断されることがあり得る。
また、この診断基準については、今後の医学・医療の発展を踏まえ、適時、見直しを行うことが適当である。